第九話 あなたならどうする?浮気相手と直接対決

アイーン伊勢谷の結婚破綻録

「もうその男の車には乗らない」

その発言からわずか半日・・・
男の車に乗ってしまった妻。

まあそれでも、
「別れ」を切り出したようなのですが
男は狂乱。

暴力と脅しで
妻からスマホを奪い取り
パスワードも聞き出した上で、
妻を車から降ろして走り去るという

「一線を越える」

行為をしてきました。

で、幸いにも?
僕の電話番号を記憶していたので
深夜のコンビニから僕に架電。

「たすけて!」

という発言に繋がります。

言ってしまえば
自分で蒔いた種。

自業自得!
な、はずですが・・・

僕は、泊っていた友人宅を出て
妻がいるコンビニに向かって
車を飛ばしたのでした。

深夜の国道は空いていて
日中なら1時間かかる距離を
30分程度で辿り着きましたよ。

飛ばしすぎ?

まあ、それは想像にお任せします。(笑)

コンビニに辿り着き、
妻とどんな会話をしたのか。
正直、正確には覚えていません。

ほっとしたのか。
怒りなのか。

一つ覚えているのは、
妻がコンビニで助けを求めた経緯を
いざとなったら証言してもらえるよう
コンビニの店員さんに依頼したこと。

そんなことをするなら
すぐに警察を呼べ、という
話ですが。

不思議なもので、
警察沙汰にはしたくないんでしょうね。

妻も警察ではなく、
僕に電話してきましたし。

さて、妻と話をしまして、

「その男からスマホを取り戻さねば」

という事になりました。

妻が、僕のスマホを使って
妻のスマホ宛てに連絡したところ
繋がった。

という経緯だったと思います。

たしか、
女友達に来てもらい、
スマホを借りて電話している、
みたいな設定にしたはず。

男を刺激しないよう
僕がいることは伏せました。

で。時間を指定して
あるドラッグストアの駐車場で
会うことになりました。

午前3時くらいだったかな。

いよいよ、
相手の男と直接対峙することに
なったんです。

「何を言ってやろうか」

これまでの経緯が
次々と浮かんできます。

頭の中をグルグルと
会話の展開予想が
巡っていましたね。

妻を助手席に乗せて
早めにドラッグストアに到着。

いざという時、逃げられないよう、
ドラッグストアから道一本挟んだ
小さなマンションの駐車場で
ライトを消して待ちました。

ドラッグストアも
24時間営業では無くて、
駐車場は閑散としていましたね。

「話を付けるから、いいよね?」

妻に念押しすると
無言のまま微かに頷いたように思います。

そして、
ヘッドライトを点灯した
車がやってきて、
ドラッグストアの駐車場に
入りました。

「来た!」

僕は車をスタートさせ、
ヘッドライトを点けます。

おあつらえ向きに
男は車のフロントを
お店の壁に向けて停めたので

リアから詰めて、
男が車で逃げられない
ポジションを取りました。

男は運転席から降ります。

リアから詰めた僕の車の
ヘッドライトが
ヤツを照らし出す。

決戦の時が、来た。

僕も車を降ります。

・・・いや、降りるはずでした。

思わぬ抵抗が、
車を降りるのを
阻止しました。

僕の腕が
信じられない強さで
妻に掴まれていたのです。

「???」

妻と過ごすと、
いろいろと疑問符が多いのですが、
この時の疑問符は
最大級でしたね。

「いや、これから話しするから」

「ダメッ!!」

何がダメなのだ・・・

ちょっとやそっとじゃ
振りほどけない力で
それも両腕を使って
僕の腕を掴んでいます。

いや、そりゃ乱暴にすれば
振りほどけるでしょうけど、

万が一にも、
妻に怪我をさせるかもしれないことは、
もちろんしません。

仕方なく、
言葉で説得するのですが、
妻は取り合わず・・・

半狂乱で
言葉を発してきます。

「ダメ!」

「なんでそんなことするの!」

「△△さんは悪くない!」

「悪いのは私じゃない!」

埒が明かない・・・

運転席のドアを開けましたが
相変わらず強烈な力で
妻は放してくれません。

なんなんだ・・・
これは・・・

妻と僕 VS その男

の、力関係のはずが、実は

妻とその男 VS 僕

という2対1。

悪党を倒しに行くナイトのはずが、
実は、悪党は僕だった?

ふと見上げると、
男が目に入りました。

男は・・・半笑いでした。

いやあ、
複雑な感情でしたね。

複雑ですが、
それらの感情を束にしたなら

「敗北感」

でしょう。

この夜の細かいやり取りは、
正直、うろ覚えですが、
ヘッドライトに照らされた
ヤツの半笑いだけは
いまだにハッキリ覚えています。

僕は妻を説得しました。

「ひどいことは言わない。
 スマホだけは返して貰わないと」

ようやく車を降りたのですが、

なんというか・・・

この夫婦騒動を見られた上で
強い台詞は、もはや言えません。

細かい会話内容は覚えていませんが、

あなたが今夜やったことは
犯罪行為になりますよ。
スマホを返却して謝罪して下さい。

という内容を伝えて、

男も、それに応じました。

で、さらに
まだ妻と会うつもりですか?
みたいなことを聞いたところ、

ここまでにします。
との、回答。

男の中でも
彼女が旦那を連れてきたことで、
何か一区切り付いたのかもしれません。

こうして、
スマホを取り戻し、
兎にも角にも
帰宅したのです。

一件落着・・・

しないんですね。
これが。(笑)

帰宅後、
疲弊している妻を
2階の寝室のベッドに
寝かせたのですが、

妻の呼吸が
明らかに乱れています。

「・・・んで」

何かを言っているので、
耳を近付けると

「なんで!・・・なんで!」

妻は叫びました。

一瞬、理解を超えていたのですが、
僕の存在など無いかのように
妻は大声で泣き始めます。

「なんで!」

「ずっと一緒にいるって言ったのに!」

「守るって言ってたのに!」

わーん

と、ドラマでしか見たことの無い
女性の泣き方でした。

・・・ようやく
理解が追い付いてきました。

妻の目線からすれば、
要するに、
さっきの対決で、

車から降りられないよう
僕を止める姿を
男に見せることで
男が妻を手に入れようとすることを
望んでいた。

そういうことだろう。

僕からすれば、
深夜に助けを求められて
せっかく楽しんでいた友人宅から
駆けつけてみれば。

この始末。

男の半笑いで
散々、惨めな思いをしたのに
ここでトドメを刺されました。

いや、今冷静に振り返れば
妻にとって僕が父親役とすれば、
彼氏にフラれて泣いている。
というだけなのかもしれません。

まあこの時は、
さすがにダメージを負いましたね。

しかもこの後、
妻は過呼吸に陥りまして。

それも放っておくことが
出来ないという。(笑)

かつて、過呼吸に陥った人の対処を
(東日本大震災のときでした)
したことがあるので
その通りに行いましたが
一向に回復せず。

あまりにも発作がひどいので
最終的に救急車を呼びましたよ。

その後、救急隊員に寝室まで
来て貰ったのですが

妻は「大丈夫」ということになり、
お礼を言ったり謝ったりしながら
帰って頂きました。

救急車を家の外で見送ると、
ちょうど、空は白みはじめていました。

長い1日が終わる。

いや、1日が始まる。

決戦の夜は
終わりを告げたのです。

決戦?

結局、誰と誰の決戦だったんだ。

僕と男?

妻と僕?

男と妻?

少なくとも
勝者は、いない気がする。

3者がそれぞれ
複雑な感情を抱えて
朝を迎えていたでしょうね。

僕はと言えば

悔しいし
惨めだし
虚しかった。

一方で、青みだしてきた空を見ながら
次の一手を考えている自分もいました。

部屋に戻ろうとすると、
毛布を肩から掛けて
妻が起きていました。

やつれきった
泣きはらした顔で。

「おはよう。調子はどう?」

僕は笑顔で
語りかけました。

結婚4年目の
朝の出来事でした。

▼続きはコチラ
第十話 2人の仲を取り戻した7年目の○○

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